カンについて

カンといっても愛は勝つではありません(昭和生まれでないとわかりませんな)。医学が経験の集合体から徐々に科学化して、カンは排除される傾向にあります。
しかし、精神医学はわからないことだらけで、カンが必要とされると思っています。現在の精神科の診断基準の主流は、DSMというアメリカ精神医学会の基準です。これに当てはめれば誰でも客観的に診断がつく。処方も病名ごとにガイドラインが決まっていて、科学的な処方が正しいとされています。
しかし、現実の精神医学は論文などの紙の上に存在するのではなく、生身の人間相手です。診断にしても治療にしても、生身の人間に対峙し続けたカンが必要になる場面があります。カンは臨床に真剣に向き合うことによってだけ養われます。放っておくとすぐ鈍る。できるだけ客観的、科学的に診療したいと思ってはいますが、一方でカンも必要です。カンが不要な世界などというのは、死んだ世界です。